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JIMTOF2024訪問レポート Vol.1「ロボットを活用した工作機械周辺作業の自動化」

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JIMTOF2024訪問レポート Vol.1「ロボットを活用した工作機械周辺作業の自動化」

東京ビッグサイト全館を利用し、出展社数が1200社を超え過去最大規模で開催された第32回日本国際工作機械見本市「JIMTOF2024」には、約13万人が来場し盛況の内に閉幕しました。TORCHとしては、特に「ロボットなどを活用した周辺作業の自動化」に着目し各社のブースを訪問してきましたので、レポートとしてまとめました。

過去最大規模で開催されたJIMTOF2024は盛況の内に閉幕
目次
  1. 各社が工作機械の周辺作業自動化も提案
  2. 複合加工機による工程集約の恩恵をロボットの活用で最大化
  3. 大型のロボットを活用する場合にも省スペース化が求められる
  4. 協働ロボットの高可搬化・ロングリーチ化が進む
  5. 高度な自動化の情報収集は他の展示会への訪問と併せて

東京ビッグサイト全館を利用し、出展社数が1200社を超え過去最大規模で開催された第32回日本国際工作機械見本市「JIMTOF2024」には、約13万人が来場し盛況の内に閉幕。「工作機械見本市」と銘打ちながらも、本展示会でカバーするテーマは、最新の工作機械の発表のみに留まらず多岐に渡り、

  • ロボットなどを活用した周辺作業の自動化
  • データを活用した生産性向上
  • 環境負荷の低減

など、生産技術を進化させながら社会課題にどのように対応しているかも大きな注目ポイントとなりました。

各社が工作機械の周辺作業自動化も提案

労働人口の減少もあって、工作機械の展示会ではロボットを見ないことはないと言っていいほど、各社がロボットを活用した「工作機械に関わる人手作業の自動化」を訴求しています。JIMTOF2024においても産業用ロボットやAGV/AMRを活用した自動化システムは多く見られました。

ある工作機械メーカーは、7割以上の顧客が工作機械のみではなく、ワークパレットプールやロボットも同時に導入していると言及しており、コンセプトとしてだけでなく周辺作業の自動化の実需要が非常に高いことを示しています。

複合加工機による工程集約の恩恵をロボットの活用で最大化

オークマ社が提供する複合加工機内にロボットをビルトインした「ARMROID」シリーズがその最たる例のひとつとなりますが、各社が加工機周辺に産業用ロボットを設置するパッケージを用意し、ワークのローディング/アンローディングなど加工機周辺の作業の自動化を提案していました。

周辺に安全柵を設置する必要のない協働ロボットを活用するケースが多く、ロボットとパレットストッカーを移動式のユニットとすることで、「産業用ロボットは動かせない」という概念から脱却し、柔軟に生産体制を構築できることをアピールする企業も少なくありませんでした。

工作機械のトレンドとして「複合加工機による工程集約」が挙げられますが、ロボットにワークの着脱を担わせることができれば、自動運転できる時間も長くなり、作業者が一人で担当できる加工機の台数も増えるため、複合加工機のメリットをより一層享受することができるようになります。

各社の工作機械の横には協働ロボットが設置されワークの着脱などを担っていた

大型のロボットを活用する場合にも省スペース化が求められる

現在各ロボットメーカーがラインナップしている協働ロボットは、低可搬重量帯がほとんどで、扱えるワークのサイズは小型のもののみとなります。そのためワークが大きく重い場合には、高可搬重量の「協働タイプではない」産業用ロボットを採用するしかありません。

その場合、安全柵も含めた設置の工数が増えるだけでなく、空間にバッファを持ちながらロボットの動作範囲を確保することで、使用するスペースも広くなってしまう傾向があるので、今後複合加工機が主流となり省スペース化を謳う場合には、周辺設備の省スペース化も自ずと求められると考えられます。

このようなケースにおいては、段取り替えに際して再度ティーチングをする必要がないようにモジュール化を徹底したり、工作機械メーカーがロボットモーションを最適化する技術を持つようなサードパーティと協業しながら狭小化に取り組む必要もあるかもしれません。

大型の産業用ロボットでワークのローディング/アンローディングを自動化している例

協働ロボットの高可搬化・ロングリーチ化が進む

一方で期待されるのは、ファナック社が2023年に発表した可搬重量50kgの協働ロボットに象徴される、「高可搬協働ロボットのラインナップ拡充」です。ロボットメーカー各社が、競って「高可搬かつロングリーチ」の協働ロボットを発表していることからも、この傾向はさらに進むものと見込まれます。

しかしながら、当然その性能を活かすべく重いワークをハンドリングすることになるため、人も働くスペースで高可搬の協働ロボットを稼働させることが、製造現場で受容されるかは未知数でもあり、セーフティレーザースキャナーを活用した減速や停止の仕組みの厳格化や、万が一のワークの落下を想定したロボットハンド=エンドエフェクターの工夫も必須となります。さらなる人手不足対策が喫緊の社会課題となった昨今において、高可搬の協働ロボットがどのように利用されていくか、引き続きウォッチしていきたいと思います。

ファナック社の可搬重量50kgの協働ロボット(※画像はファナック社ウェブサイトから引用)

高度な自動化の情報収集は他の展示会への訪問と併せて

これまで言及してきたように、大手をはじめとする各社が工作機械のみならず周辺作業の自動化も提案していましたが、マシンビジョンを利用した事例は位置補正の用途が中心で、3Dビジョンを活用したバラ積みピッキングなど高度なロボットハンドリングの展示はあまり見られませんでした。

主題が「工作機械」であるJIMTOFにおいては、ロボットシステムよりも工作機械や関連する要素技術・モジュールの展示を重視することは当然ですし、ブースサイズの制約を考慮すると、大手企業以外には周辺設備を伴った出展は難しかったのかも知れません。またJIMTOFの出展カテゴリの分類を見てみると、「自動化提案」という枠がなく、いわゆるSIer(システムインテグレーター)の出展はあまりないので、愛知県で開催される「メカトロテック」や「ロボットテクノロジージャパン」などと併せて最新情報を入手することが大切になります。TORCHとしても、様々な展示会に訪問を続けて、産業オートメーションについて総合的に情報発信していけるようにマーケット調査を続けていきます。

バラ積みピッキングのような高度なハンドリングシステムの出展は限定的だった

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