2025年1月、「先端技術による物流革新展」という副題がつけられた「第5回 スマート物流EXPO」が開催されました。同時開催展と併せて約8万人の来場者が訪れ、実際に訪問した際にも非常に活況な印象を受けました。
一方で、出展社が提供しているサービスやソリューションは多岐に渡り、これらの技術を導入して効率化を目指す物流業や製造業の物流関係者にとっては、どこから手をつけるべきか判断が難しい状況になっているのではないでしょうか。
今回は、まず「スマート物流とは何か?」を紐解き、「スマート物流EXPO」のような展示会をどのように視察し情報を集め、有効な技術やサービスを取り入れるきっかけ作りをするべきかを考えていきたいと思います。
スマート物流とは:定義と変化する意味
結論から述べると、スマート物流とは「最新の技術やデジタルソリューションを活用して、物流プロセス全体を最適化・効率化・自動化することを目指した概念」とされることが一般的です。これには、AIやIoT、自動化技術、データ分析などの新しい技術を組み合わせ、物流業務を進化させるという意味が含まれます。しかし、この定義は情報を提供する人や文脈によって広がりや解釈が大きく異なります。
定義が広いのは、この概念が変化する物流関連のテクノロジーの一部であり、またその流動に対応する各業界・各企業の解釈や提案が異なるためです。この点を考慮すると、「スマート物流」という言葉は解釈の自由度が高いものとして見なければなりません。
その理由をもう少し詳しく見てみましょう。
1. スマート物流の多義性
・技術の進化に伴う定義の拡張
スマート物流はAI、IoT、自動化、データ分析、ロボティクスなどの技術を取り入れることで進化しています。新しい技術やトレンドが加わるたびに、その意味合いが広がるため、人によって異なる要素が強調される傾向があります。
例: AIを重視する人と、自動倉庫を中心に考える人では焦点が異なる。
・分野や立場による解釈の違い
スマート物流は、倉庫管理、輸配送、サプライチェーン全体といったさまざまな側面を含みます。物流業界、IT業界、行政機関、それぞれが異なる視点でこの言葉を使用しています。
2. 公的機関の定義と民間の実践が一致しない
・公的機関の取り組み
内閣府や経済産業省などでは、「スマート物流」をサプライチェーン全体の効率化やデータ活用の最適化を含む概念として取り扱っています。
例: 内閣府のSIP「スマート物流サービス」では、データ共有や物流標準化を重視。
・民間企業の独自解釈
一方で、民間企業は自社の課題や強みを踏まえたアプローチを行っており、特定の技術やサービスにフォーカスすることが多いです。
例: ある企業はロボティクスに注力、別の企業はクラウド型物流管理システムを強調。
3. トレンドやマーケティングの影響
・「スマート」という言葉の汎用性
「スマート」という言葉は、技術的な進化や効率化を表現する際に便利であり、マーケティングでも頻繁に使われます。その結果、明確な定義を伴わずに広く使用されることがあります。
例: 従来型の物流改善も「スマート物流」としてPRされることがある。
・技術的深さのばらつき
専門家による高度な議論から、一般的な効率化策まで、「スマート物流」と称される内容の深さや範囲が統一されていません。
この他にも「業界による取り組みの差」や「地域的な進展の違い」などが、「スマート物流」という用語の曖昧さに影響を与えていることも考えられます。 以上のような事情を踏まえて、 「スマート物流とは、最新の技術やデジタルソリューションを活用して、物流プロセス全体を最適化・効率化・自動化する仕組みや概念である。」 とされているのが現状です。それでは以下に、技術や手法にフォーカスして、スマート物流の特徴をまとめてみます。
スマート物流の特徴:使われる技術や手法
1. デジタル技術の活用
- IoTを活用し、物品や設備の状態をリアルタイムでモニタリング
- センサーやRFIDタグを使用した物流拠点や輸送中の荷物のトラッキング
2. データ分析とAI
- AIやビッグデータを活用して需要予測や在庫管理を最適化
- データドリブンな意思決定による配送ルートや輸送手段の効率化
3. 自動化
- 自動倉庫、AGV、AMR、ピッキングロボットを活用した自動化
- ドローンや自動運転車を用いたラストマイル配送
4. コネクティビティ
- サプライチェーン全体でシステムやデータを連携し、情報の透明性を向上
- WMS/WES/WCSなどの管理システムで自動化設備を統合
5. 環境配慮
- カーボンニュートラルやサステナビリティを重視し、輸送効率やエネルギー消費を最適化
スマート物流の定義を分かりづらくする要因の一つではありますが、現場ではこれらの5つの特徴が単体で実現されるだけでなく、相互に組み合わさることでより高度な物流環境が生まれています。
展示会では、これらの技術や手法がどのように組み合わされているのかを意識しながら視察することをお勧めします。 また、重要なのは、「スマート物流」と称されるサービスやソリューションを導入することで、自社のどの問題をどのように解決できるのかを見極めることです。そもそも自社の課題を正しく理解するための手段として、最先端のスマート物流を問題解決の選択肢として知っておくことが重要になるでしょう。