マシンビジョン市場を牽引する検査分野での活用
オートメーションに特化した調査会社「Interact Analysis」の市場レポートによると、マシンビジョン市場では検査分野が大きなシェアを占めており、2022年にはこの分野が全体の40%以上を占めたと報告されています。
この傾向は、「国際画像機器展2024」の出展製品にも顕著に表れていました。展示会では、「高スループット」「高解像度」「AI/ディープラーニング」「ノーコードで簡単導入」といったキーワードを掲げ、多くの企業がFA分野をはじめとする幅広い産業向けの検査アプリケーションを積極的に提案していました。
情報出典:Interact Analysis.「Machine vision market CAGR of 6.4% between 2022 and 2028」
AI/ディープラーニングの進化とその可能性
特に注目されたのが「AI/ディープラーニング」を活用したアプリケーションです。
AIベースの画像認識技術は、複雑で手間のかかる検査タスクを正確かつ迅速に処理できる能力を持ち、これまで対応が難しかった分野へ応用する可能性を広げています。
たとえば、製造業において従来のルールベースの検査で対応できなかった細微な欠陥検出や、特徴の差による分類・仕分けが可能となります。このようなAI技術の導入により、誤差や欠陥の検出精度が飛躍的に向上することで、生産性の向上とコスト削減を両面から実現することが期待されています。
一方で、AIベースのアプリケーションには課題も指摘されています。たとえば、AIが不得意とする厳密な測定や、アルゴリズムの内部動作がブラックボックス化しやすい問題があります。
これに対応するため、従来型のルールベースのシステムを併用したハイブリッド型アプリケーションを提案する企業も増えています。これにより、AIの利点を活用しつつ、信頼性と透明性、生産性を確保するアプローチが模索されています。
アジア太平洋地域の成長と中国メーカーの台頭
前述の市場レポートでは、アジア太平洋地域(APAC)がマシンビジョン市場の中心的存在であることも指摘されています。この地域では、製造業の急速な成長とともに、自動化技術の導入が進んでおり、中国が特に大きなシェアを占めています。
本展示会でも、中国発のメーカーがハードウェアおよびソフトウェアの技術力をアピールし、国際市場での存在感を高めている様子が印象的でした。こうした中国メーカーの台頭は、価格競争を激化させるとともに、製造現場への普及を加速させると予測され、マシンビジョンを活用したソリューションのさらなる進化を促進する要因になると考えられます。
成長していくマシンビジョン市場と拡大していく応用分野
調査によると、2022年から2028年にかけてマシンビジョン市場の年平均成長率(CAGR)は6.4%と見込まれており、2025年以降も市場のさらなる成長が期待されています。その主要な推進力となるのが、AI技術の進化、労働力不足への対応、そして応用分野の多様化です。
本展示会では、「ロボティクステクノロジーゾーン」が特設され、アームロボットを活用した検査ソリューションや、3Dマシンビジョンを活用した3Dロボットピッキングが実演されていました。これらは、画像処理技術が他システムとの連携を通じて、その能力を発揮する場をさらに拡大していることを示しています。実際、ロボット技術を集結させた「国際ロボット展」や物流ソリューションに特化した「国際物流総合展」においても、マシンビジョンを活用した技術やソリューションは多数見られ、この傾向は加速していくと考えられます。
また、深刻化する労働力不足は、多くの企業にとって喫緊の課題です。この状況を受けて、マシンビジョンを活用した自動化ソリューションは、単なる効率化ツールにとどまらず、持続可能な事業運営のための不可欠な技術として位置づけられつつあります。
今後も、マシンビジョン市場は基盤となるソフトウェア・ハードウェア技術の進化と、AI技術の発展および産業課題への対応を通じて進化を続けるでしょう。これにより、マシンビジョンの普及と応用分野のさらなる拡大が期待されます。